誤訳の発見法

 

誤訳の発見法

 

日本語に翻訳したものを読んでいて、理論的でなく理解に苦しむ部分がでて来たり、これはどうも人間の自然な感情としてはヘンではないかと思う部分がでて来たら、もう一度英語の原文に戻って読み直してみることです。そうするとたいていの場合に誤訳を発見します。

 

例えば<フットボールを見物していた人たちのごくわずかな摩擦だけが試合の終わる前に去ってしまった>という訳文はおかしいことがすぐわかります。
その原文はOnly a fraction of the people watching the football game left before it was over.<フットボールを見物していた人たちのなかで試合終了前に帰ってしまったのはほんのわずかであった>であって、fraction(全体のうちのわずかな部分、分数)をfriction(摩擦)と見誤ったための誤訳です。

 

あるいはまた、<ふるさとの山々を見た途端、私の心は郷愁で満たされた>という訳文ですが、ふるさとに帰って来ているのに、「郷愁」を感じるのはおかしいわけです。

 

英語原文を見るとThe moment I saw the mountains of my home town, my heart was filled with a sense of nostalgia. となっています。

 

Nostalgiaには二つの意味があり、一つは「郷愁」、一つは「懐旧の情」です。「郷愁」はhomesickness、つまりふるさとを遠く離れた異郷の地にいて、さびしさに苦しみ、ふるさとのことを恋しがることです。

 

一方の「懐旧の情」はwistful longing for something one has known in the past、つまり自分が過去に接したものに心が引かれて懐かしく思うことです。そこでこの場合は<ふるさとの山々を見た途端、私の心は懐かしさでいっぱいになった>と訳すのが正しいわけです。

 

誤訳はこのように、綴りの見誤り、単語の解釈の誤りのほか、構文が複雑で読み違えたり、文化の相違でよく分からないところを推測や想像をたくましくして訳したために生じる場合もありますが、いずれの場合でも訳文を読んでいてどこか変であるので誤訳と分かるわけです。