誤訳を指摘されたとき

 

誤訳を指摘されたとき

 

翻訳といえば誤訳ということがだれしもすぐ頭にうかびます。

 

誤訳というものは空気のなかに酸素の他に窒素があるように、翻訳のなかには必ず含まれているもので、誤訳の一つもない完璧な翻訳はそうざらにあるものではないと思います。

 

良心的に翻訳しているつもりでも、思わぬ読み違いをすることもあろうし、時間がないまま十分自分で納得行かないままで、エイヤァとばかり訳して先へ進むこともありましょう。

 

翻訳者自身で内心そう思っていながら、自分の誤訳を他人から指摘されると、ひどく自尊心を傷つけられたように思い、反論したり、逆に相手の誤訳を探し出してあげつらったりします。

 

それでは日本の翻訳水準の向上は望めないと思います。一つには、おそらく鬼の首でも取ったかのような誤訳の指摘の仕方がよくないからであろうし、
他方では、読者よりも自分のほうがはるかに語学力が上であるという翻訳者の自負があるからでしょう。

 

読者は気のついた誤訳部分を、善意をもって大いに翻訳者に知らせ、翻訳者は常に自分の翻訳を読み返して、誤りを訂正するように心掛けるとよいです。翻訳は手を加えれば加えるほど必ずよくなるものです。

 

何度も何度も原書を読み返し、理解し、その理解を深め、急がず、ゆっくりと手間暇かけて翻訳の仕事をすること、そして訂正を心掛けることが大切で、そうすれば誤訳のない良質の翻訳が出来上がるわけです。

 

さて、そこを何度読み返しても文意がとりにくいようであれば、その箇所は誤訳している可能性が高いです。

 

翻訳者は原文を知っていますから一応意味が分かりますが、読者にとって分かりにくい訳文になっていることに気がつかないことも多いです。

 

そこで読者に頼んで、一読意味の分かりにくい箇所をマークしてもらうとよいです。

 

翻訳者が原文の英語に引かれて、一語一語、ニワトリがえさをついばむように対訳し、英語の語順はそのままで、名詞は名詞に、形容詞は形容詞に、副詞は副詞に訳しているようなところでは誤訳や不自然な訳になっていることが多いです。