引用句辞典を常備する

 

引用句辞典を常備する

 

英米人は文章のなかにごく自然に聖書やシェークスピア、そのほか有名な小説や詩からの引用句を入れることがあります。

 

そのため私たちはうっかりすると誤訳したり、意味不明の直訳をしたりする危険があります。

 

例えばまた次の英文を見てみましょう。

 

The writer may well pattern himself on the fully exposed cow of Stevenson’s rhyme.

 

これを<ものを書く人はスチブンソンの完全にさらされたウシをまねてみてはどうかと思う>と直訳しただけでは、翻訳した当人はもとより、その訳文を読んだ読者にも何のことかわからないでしょう。

 

この場合、引用句辞典で、“ウシ”の項を引くと、スチブンソンの有名な詩The Cow(ウシ)からの引用で、この雌牛は牧場で雨や風にさらされても悠々として過ごし、人間のためのミルクをこさえるなんぞには一向おかまいなく自分のペースで生きている、という内容の美しい詩です。

 

このことを知っていれば、上の英文は<スチブンソンの有名な詩のなかの全身雨風にさらされて悠々とマイペースに生きる雌牛のまねをして、自分の文章が批判にさらされてもあわてず、人のためだと肩ひじを張ったり、世間におもねたりせずに自分の信念で文章を書いて発表してみてはどうか>と、読んで分かる日本語に訳すことができます。

 

上の例でわかる通り、翻訳者にとって引用句辞典は欠かせません。引用辞典としては、The Oxford Dictionary of Quotationsが有益です。