訳文を他人に読んでもらう

 

訳文を他人に読んでもらう

 

日本語訳文を通読してみて、常識的に考えておかしい所、あるいは理屈に合わない所に出あったなら、そこは誤訳している可能性が非常に高いということです。

 

しかしそれを案外翻訳者自身は気づかないことがあります。

 

翻訳者は英語原文が頭にあるので、それに引かれて不自然で分かりにくい日本語になったり、翻訳に熱中するあまり、あとで冷静になって考えるとどうしてそんな馬鹿な、つじつまの合わない訳文を作ってしまったのかと不思議に思うことがあります。

 

そこで、原文を見たことのない他人、あるいは家族のだれかに通読してもらい、日本語として分かりにくい所、つじつまが合わずおかしいと思う所を素直に指摘してもらうのが大いに役立ちます。

 

読んでもらう人は英語を全く知らない人でよいわけですが、日本語の語感の鋭い人であること、常識の発達した、曇りない公平な目で批評できる人であれば申し分ありません。

 

例えば次の訳文を読んでみましょう。この文の前には「地下鉄は安全で、信頼性が高く、交通渋滞によるいらいらや、遅延がないなどの利点がある」という文があることを頭に入れて読んでみましょう。

 

一時間に十万人もの大量の乗客を輸送できる地下鉄の能力は、好意的に見ても実際よりかなり人数が多いようです。

 

翻訳者は気づかないかもしれませんが、この訳文を読めば普通の読者ならだれしもおかしいと思うに違いありません。

 

そこで原文を見ると、
The capacity of underground railway to move huge numbers of people ----- up to 100,000 an hour ------ is reckoned to stand further in their favor.

 

これの改訳例を示せば、

 

地下鉄に大量の人間(一時間に十万人もの)を移動し得る能力があることは利用者にとって更に利点であると考えられている。

 

reckon=consider(と思う、と考える、と評価する)、stand=maintain a position(ある位置を占める、ある状態にある/We stand in need of help. He stands in an awkward position. 困った立場にある)、in one’s favor=to the advantage or profit of someone (The exchange rate is (stands) in our favor. 為替レートは今わが国に有利になっている、〜の利益になっている)、further=in addition(安全、高信頼度、等々前述の利点に更に加えて、の意)、their favor = passenger’s favor (theyとは地下鉄利用者を指す)。